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「かっこつけてる」が真っ直ぐな心を殺す ~絶対に許さないその理由~ [学級経営]

担任している子供に「先生ってもしかしてかっこいいつもりですか?」って聞かれたことがある。
たぶんその子にしてみれば「たいしてイケメンでもないくせにかっこつけてんじゃねーよ!」みたいな嫌みを言ったつもりだったんだろう。

思春期に入るとそういうことを言い出す子が出てきて、学級の問題を指摘したり、みんなが嫌がってることを進んで引き受けたりする子が、「かっこつけてる」と思われるんじゃないかと気にして萎縮してしまうことがある。何を隠そう僕自身それでかなりいじめられた経験の持ち主だ。

僕は低学年の時は先生の揚げ足をとって遊んでるようなクラスの厄介者だった。2年の担任には母を呼び出され「この子を何とかしてください!」と叱られた。それが4年生の担任に学級委員にされてから、リーダーとして集団を動かすことの大変さを痛感するとともに、その喜びを知ってしまった。
そのとき子供心によくわかったのは「人を動かすときはまず自分がきちんとしていなければならない」ということだ。普段いい加減なことをしているくせに前に立ったときだけ偉そうなことを言っても誰も聞く耳を持たない。先生の目の前ならなんとかなるが、子供だけのときは全くダメ。子供はシビアだ。

高学年からはリーダー的にやっていてそれなりに信頼も得ていたが、中学に入ると別の小学校から上がってきた子供たちの間に「あいつ何仕切ってんの?」的なことを言い出す子が出てきた。同じ小学校の仲間たちからもそれに賛同する子が出てきて、いじめが始まった。

休み時間に呼び出されて囲まれ「仕切るな」「デカイ面すんな」「いきるな」「うっとうしい」など言葉の暴力から始まり、すれ違い様に腹を殴られる。放課後呼び出されて、野球部のキャッチャーをやってるデカイやつと決闘させられる。などなど。とても辛かったが誰にも相談できなかった。
クラスの友達は気付いていたけど、誰も助けてくれなかった。

一月ほど経った頃、学校に行くのがどうしても耐えられなくなり、母に「行きたくない」と告げると「最近ずっと暗い顔してるけど何かあったんか?」と聞いてくれた。優しい笑顔に僕は全てを打ち明けた。
母は丸くうずくまった僕を覆い被さるように抱きしめ「誰がなんと言おうとあんたは悪い子じゃない。私は知ってるよ」って一緒に泣いてくれた。

「僕は悪いことはしていない」

その通りだ。一人では「やりたい」と手も挙げられず、それでいてそれを妬む者で徒党を組むような卑屈なやつらに負けられない。

そんなやつらから逃げるのが馬鹿馬鹿しくなった僕は急に心が強くなって、次の日は逆に意気揚々と登校していった。
「何も悪いことはしていない」と確信してからは呼び出される度に「どうしてこういう嫌がらせをするのか」逆に問い詰めてやった。「うるせー!ムカつくんだよ」っ切れられるかと思ったら意外にも「めんどくせー!」っ逃げていった。要するにビクついている相手をいたぶるのが楽しかっただけなんだろう。

やられるからってオドオドしてたら余計にやられる。
自分に自信があるなら開き直って立ち向かえばいい。あれでやられたまま終わって、そこから遠慮して暮らさなくて本当によかったと思っている。

だから「かっこいいと思ってるんですか?」的なことを言い出す子には毅然としてこう言う。

「お前は自分のことをかっこ悪いと思ってるのか?自分で自分のことをかっこ悪いと思い続けてよく生きていられるな」と。
そしたら大抵「今はまだかっこ悪い。いつかはかっこいい自分になりたいと思ってる」と返してくる。人間には今しかないんだ。

「お前は今、かっこよくなろうと努力しているのか?
自分の理想を描き、それに近づこうと努力しない人間はいつまで経ってもかっこ悪いままだ。姿かたちのことを言っているんじゃない。一番かっこいいのはそういう心のあり方のことだろう。かっこよく在ろうとする心をバカにするやつが一番かっこ悪いんだよ」

仕事を引き受けみんなのために働こうとしているものをバカにしない。
夢を描いて努力するものをバカにしない。
誰にだって無限の可能性がある。
それを邪魔するやつは絶対に許さない。

軽い気持ちで言った「かっこいいと思ってるんですか?」でここまで叩かれるとは彼も思っていなかっただろう。
でも、「かっこつけてる」で人を委縮させることは、まっすぐな心を折れさせること。
勇気をもってふみ出そうとする心を殺すことだ。

僕は子どもたちに「夢を描き、それに近づくことに躊躇してはいけない」といつも教えている。
中学校に行って、それを実行しているとやはり「かっこつけんな」的な嫌がらせを受けることがあるらしい。
今も昔も思春期の子どもたちの精神構造は大して変わらない。

自分では少しも努力しないでいて、一歩踏み出そうとするものをつぶそうとするのはなぜか?
きっと率直な表現が眩しくて羨ましいのだろう。
それならみんなそうなればいい。
一人一人が自分の思いを正直にぶつけ合えばいい。

今、同じことで悩んでいるかつての教え子が手紙をくれた。
そこには、
「僕は今、たくさんのことを学んでいます」
と書いてあった。

電話で久しぶりに少し話した。

彼には支えてくれる仲間もいる。
家族も理解してくれている。
きっと大丈夫だ。
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